2014年4月、ツアーバス等に使われる貸切バスの運賃制度が大きく改正されました。
2012年に起こった関越道のバス事故を受けてのことです。
詳しくはこちらでお話ししています:
関越道の事故は、運転手の居眠りが原因でした。
バス会社の得る報酬が安すぎたため、無理な運行につながったというのが公の理解です。
これを防ぐため、実質的にバス料金を大幅に値上げする改正となりました。
もしこの新料金が個々の現場にしっかり定着して、守り切られたならば、
高速バスの安全性は高くなっていたのかもしれません。
しかし現実には、2016年1月、
軽井沢でまたしても大きな事故が起こってしまいました。
安全な運行を確保するためには、相応の費用が必要です。
が、世間ではまだ、「バス=安い乗り物」という感覚が根強くあります。
この感覚が残っている限り、
バスは安全な乗り物にはなれないのではないかと私は思います。
実際のところ、バスとは、
新幹線よりも、
飛行機よりも、
ゼイタクな乗り物だと言えるのです。
バスほど高い乗り物はない!……はず
近年、ピーチやジェットスターといったLCC(格安航空会社)が元気に営業しています。
路線はどんどん増えていますし、これからしばらくは増え続けるでしょう。
LCCといえば、国内はもちろん、海外ですら、
片道数千円で行けるような価格で座席を販売しています。
飛行機は「安い」乗り物になったのです。
LCCの先進地域である東南アジアでは、
飛行機はもはや「バスより安い乗り物」です。
これは航空会社の経営努力とか、斬新なビジネスモデルの創出とかがあってのことです。
が、それより前に、ひょっとして飛行機って、
実はバスよりコストのかからない乗り物なのかも知れません。
燃料費とか空港の離着陸料、駐機料など、いくらくらいかかるか私には想像もできません(笑)
まあそれは、結構かかるんでしょう。
でもその分、飛行機という乗り物には、
お客さんを何人いっぺんに乗せられるでしょう?
ピーチで使用している機材は、180席あります。
一本の便で、最大180人のお客さんをまとめて運べるわけです。
これがバスなら、補助席も含めて詰め込みに詰め込んだとしても、
せいぜい一台に60人まで。
一度にお相手できるお客さんの数が全然ちがうのです。
また、たとえば大阪から仙台まで、飛行機なら1時間半くらいなものです。
これがバスなら14時間くらいかかります。
人間の拘束時間も全然ちがいます。
パイロットとバスドライバー、技能の種類はちがっても同じ人間です。
生きていくのにかかるコストは、基本的に大して変りないはず。
こういうところを考えていくと、バスって結構コストかかるはずです。
何といっても人件費というのは大きいですから。
バスはゼイタクな乗り物なのですよ、実は!
というような見方もできますよ
という、
これは視点のお話です(笑)
そりゃ飛行機とバスでは、
新しい機材/車体を導入するのにかかる初期費用がちがいます。
維持費も桁外れにちがうでしょう。
同列に議論することはできません。
が、実感として、バスってゼイタクだなあ……と、
本当に感じるのです。
私は関西から東北へ行くバスツアーの添乗をすることがあります。
運転手さんもおなじみの方です。
行き帰りとも夜行の行程で、
2人の運転手さんが交代でハンドルを握るのを見ていると、
心から大変なお仕事だなあと感じます。
ツアーが現地に滞在している間はもちろん休んでもらいますが、
それでも出発から帰着まで、実質的には丸4日、2人の人間を拘束するわけです。
それに対してバス会社に支払われる料金というのは……
値上げ後の新運賃になっても、
やっぱり安いものだと感じますよ。
それでもお客さんは、「バスなのに結構高い!」と感じてしまう。
このギャップはつらいところです(笑)
日本ではバスの運転手さんって、なり手が少ないようです。
で、ドライバーの高齢化が進んでいることも、大きな問題になっています。
そういう事情も含めて未来予測をすると、
「バス旅行」というものは、近い将来、なくなってしまうのかもしれませんね。
特に長距離のは。
「夜行列車」って昔は日本にいっぱいありましたが、
今は全然なくなりました。
「夜行バス」なんていう文化も、結構近いうちになくなるのかも知れません。
ツアーの参加者が一体感を感じられる、
いい雰囲気の乗り物なんですけどね。
この事態を根本的に打開する、たった一つの光明があります。
それは、自動運転技術の普及です。
逆に言うと、「安全かつ安い」を無理なく両立させる方法は
ちょっと他に思いつきません……