私は旅行企画を仕事にしているので、
大手旅行会社さんのツアー商品も、勉強のために見ています。
この間、度肝を抜かれるようなツアーの広告が新聞に出ているのを見つけました。
パッケージツアーって本当にたくさんあるのですが、
たくさんある分、内容的にありきたりだったり、無難だったりするものが多い。
でも、「北海道新幹線開業記念」をうたうこの企画は心底凄いと思いました。
旅行企画でこんなにビックリさせられた覚えは、ちょっとありません。
「北海道新幹線に乗る」だけじゃない?
2016年3月26日。
北海道新幹線が函館まで開業しました。
それを受けて、
「新しい新幹線に乗ってみましょう!」というツアー商品が出てきます。
そりゃ出てきます。
普通です。言ってしまえば、誰にでも思いつく企画ですね。
東京から函館まで北海道新幹線で行くと、4時間以上かかるようです。
そこそこの長旅、お尻も痛くなりそうです。
だから、「北海道新幹線に乗る」という趣旨のツアーでも、
「帰りは飛行機で!」を売りにするものも入ってきます。
思いやりを感じますね。
「行きはじっくり楽しみながらでも、帰りはサッと帰りたい」
という人は多いので。
思いやりは感じます。
でも、その優しさの分、企画の鋭さは目減りしていると言えなくもない。
「北海道新幹線に乗る」という企画なら、往復とも乗る形の方がやっぱりシャープです。
そこで見つけた、モノ凄い企画。
阪急交通社の「開業記念企画」です。
新聞の全面広告に出てました。
北海道新幹線の開業直後だったので、
最初は「ああ、出てる出てる」くらいの感じで見ていました。
ところが、見れば見るほど
「ん?」「ん?」がどんどん出てくる。
このツアーは何をやろうとしてるのか?
意味がわからんようになってくるんです。
「北海道新幹線」ていう看板の割には、旅程がえらい複雑なんですよ。
盛岡から秋田向きに入ったり、
山形を通ったり、
大宮まで帰ってきたと思ったら、そこから新潟に向かったり、
そのあと北陸の温泉に泊まったり。
ぜんぜん「北海道新幹線」と関係ないやん……
で、ようやく気づきました。
このツアーのメインの趣旨は「北海道新幹線」ではなく
「ぜんぶの新幹線に乗る」ということだったのです。
いま日本には9つも新幹線が走っているようです。
数えたことなかった…
このツアーの何が凄いって、
初日、新大阪を出発してまず北海道に向かうのですが、
4日目には北陸の温泉から新大阪に戻ってきます。
で、せっかく帰ってきたところで、
そこからまっすぐお家にも帰らず、
そのまま九州新幹線に乗って、鹿児島まで行ってしまうことです。
これは凄いです。
これは旅行バカです😂
そして次の日、旅程5日目に、
再び九州新幹線で新大阪に帰ってきて、
ようやく終了ということなんですね。
4泊5日。
一応、「すべての宿泊は温泉で」ということになってます。
でもこれ、明らかに「温泉旅行」ではないです😆
「何しに行く旅行?」
「意味がわからん」
「しょーもな」
こんなツアーに参加する!って周りに話したら、
いろいろ言われそうです。
でもね、私、思うんですけど、
そもそも旅行って、こういうもんじゃないですか?
旅行に行くこと自体、
その趣味を持ってない人には意味わからん活動です。
いろいろ準備して家を出て、
費用と時間と労力をかけてどこを回って何を見たとしても、
何日か後に、ただ出発した家に戻ってくるだけの活動じゃないですか。
言い方によっては。
趣味なんて、多かれ少なかれ、
マニアックなものです。
旅行は趣味の中でもわりとポピュラーなものとされていますが、
「どんな旅行が好きか」というところまで掘り下げると、
意外とマニアックやったり、
オタクっぽかったり、
意味が理解されへんかったり、
アホかって言われたり、
するものなのでしょう。
「海外旅行に行ってきます!」と言えば
「いいねー」って言われる。
でも、
「一人でインド行ってホコリまみれになって安宿泊まり歩きます!」と言えば
「アホか」て言われる。
私もこれまで、いろいろ言われてきました😏
そんな、話聞いた人の半分以上が「アホちゃうか」って言われるような旅行企画を、
阪急交通社という最大手さんが打ち出している。
そこが凄いと思うわけです。
人から「アホか」て言われる旅行であればあるほど、
行った本人の中には、後々までずっと、深いものが残り続ける。
そんなもんじゃないかと思うわけですよ。
どうせやるなら、
他人様から後ろ指を差されるくらい、
「趣味」に走った旅を楽しみましょうよ!
このツアーに参加する方々、
どんな顔して帰ってこられるのでしょう?
見に行ってみたいくらいです。
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このツアー、実は55歳以上の夫婦限定の企画です。
だからこそ、15万円という値段(これ安いと思います!)で行けるんですね。
「フルムーンパス」というJRの割引プログラムを使った商品なわけです。
ただ、旅行「マニア」の若手にとっては、
旅程を見るだけでも勉強になります。